$ \newcommand\bm[1]{\boldsymbol{#1}} \newcommand\ve{\varepsilon} \newcommand\vecseq[3]{{#1}_{#2}, \ldots, {#1}_{#3}} \newcommand\cA{\mathcal{A}} \newcommand\cD{\mathcal{D}} \newcommand\cB{\mathcal{B}} \newcommand\cM{\mathcal{M}} $
 

Kolmogorovの拡張定理に関するメモ

Kolmogorovの拡張定理についての覚え書き. 本当は証明もしっかり書きたかったけれど, 少しはっきり分からない箇所があったのと, 教科書の丸写しに近くなったのとでやめた.


非専門家が書いています. 十分に批判的に読んで頂くようお願いいたします. 間違い・疑問点などあれば, ぜひコンタクトフォームへ連絡いただけると幸いです.

準備

以下, 2つの写像 $p_n$, $p_{n, m}$ を定義する.

以下のように, $\mathbb{R}^\infty$ の点に $\mathbb{R}^n$ の点を対応させる写像として $p_n$ を定義する. つまり,

\begin{align} \large p_n : \mathbb{R}^\infty \longrightarrow \mathbb{R}^n, \quad (x_1, x_2, \ldots) \longmapsto (x_1, \ldots, x_n) \end{align}

である. また, $n \lt m$ のもとで, $p_{n, m}$ を

\begin{align} \large p_{n, m} : \mathbb{R}^m \longrightarrow \mathbb{R}^n, \quad (x_1, \ldots, x_m) \longmapsto (x_1, \ldots, x_n) \end{align}

と定義する.

Kolmogorovの拡張定理

Statement

分布の列, $\{ \mu_n \}_{n=1}^\infty$, $\mu_n \in \mathcal{P}^n$ ( $\mathcal{P}^n$ は $n$ 次元分布全体の集合 ) が以下のKolmogorovの両立条件 ( K )

\begin{align} \large \mu_n = \mu_m \, p_{n, m}^{-1} \tag{K} \end{align}

を満たすならば, $\mathbb{R}^\infty$ の上に唯一つの分布 $\mu$ が存在して,

\begin{align} \large \mu_n = \mu \, p_n^{-1}, \quad n = 1, 2, \ldots \end{align}

となる.

証明の方針

以下のような3段階にわけて証明される ( 伊藤『確率論』定理2.20 ) .

  1. $\tilde{\cB_n} = \{p_n^{-1}(E_n) \mid E_n \in \cB^n \}$ として, $\cA = \bigcup_n \tilde{\cB_n}$ を定義域とする, $\mathbb{R}^\infty$ 上の初等確率測度 $\tilde{\mu}$ を作る.

  2. 共通点性 $A_1 \supset A_2 \supset \cdots, \; A_n \in \cA,\; \inf{\tilde{\mu}(A_n)} \gt 0 \Longrightarrow \bigcap_{n=1}^\infty A_n \neq \varnothing$ を示すことで, $\mathbb{R}^\infty$ 上の確率測度の拡張定理 を用いて, $\tilde{\mu}$ を $\mathbb{R}^\infty$ 上の分布 $\mu$ に拡張する.

  3. 一意性は, 確率測度の一致の定理により示される.

その逆

Kolmogorovの拡張定理の逆も成り立つ. この証明は複雑ではない.

まず, $p_n$ と $p_{n, m}$ とは, 射影であるので連続写像である. また, 連続写像は可測 ( この場合 Borel可測 ) である. さらに,

\begin{align} &p_{n, m} \circ p_{m, l} = p_{n, l} \\[5pt] &p_{n, m} \circ p_m = p_n \end{align}

は明らかである. 余談だけれど, $p_n$ は $p_{n, \infty}$ の略だと思うと考えやすい.

いま, $\mu$ を $\mathbb{R}^\infty$ 上の分布とする. このとき, $\mathbb{R}^\infty$ も $\mathbb{R}^n$ も完備可分距離空間なので, 補題2.3より, 像測度

\begin{align} \mu_n = \mu p_n^{-1} \end{align}

は $K$ 正則, すなわち正則確率密度であり, 分布の定義より, $\mathbb{R}^n$ 上の分布となる.

このようにして, 分布列 $\{ \mu_n \}_{n=1}^{\infty}$ が得られる. すると, $E \in \cB^\infty$ に対して,

\begin{align} p_n^{-1}(E) &= (p_{n, m} \circ p_m )^{-1}(E) \\[5pt] &= p_m^{-1}(p_{n, m}^{-1}(E)) \notag \end{align}

であるので,

\begin{align} \mu_n = \mu p_n^{-1} = \mu p_m^{-1}(p_{n, m}^{-1}) = \mu_m p_{n, m}^{-1} \end{align}

となり, Kolmogorovの両立条件が得られた.

感想・参考文献

感想

ネット上でいろいろ調べると, どうもこの定理はかなり重要な定理であるらしい. また, その重要性がわかったら記事を書き足したい.

参考文献

伊藤清 確率論 (岩波基礎数学選書)

大田春外 解いてみよう位相空間〔改訂版〕 :射影の連続性について確認した.

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