Lebesgue分解
最終更新:2021/10/31
Lebesgue分解の証明. 伊藤『確率論』定理2.9.
非専門家が書いています. 十分に批判的に読んで頂くようお願いいたします. 間違い・疑問点などあれば, ぜひコンタクトフォームへ連絡いただけると幸いです.
いくつかの定義
分布
$\mathbb{R}$ 上の正則確率測度を ( 一次元の ) 分布という.
以下, $\mu$, $\nu$ は分布とする.
不連続分布
$\mu(\{ a \}) \gt 0$ となる $a$ を $\mu$ の不連続点といい, 不連続点の集合を $D_\mu$ とかく. この集合は, 可算である. 特に, $\mu(D_\mu) = 1$ となる分布を純不連続分布という.
連続分布
$\mu(\{ a \}) = 0$ となる $a$ を $\mu$ の連続点といい, 連続点の集合を $C_\mu$ とかく. 特に, $\mu(C_\mu) = 1$ となる分布を連続分布という.
特異分布
$\lambda$ を Lebesgue測度とする.
のとき, $\mu$ は絶対連続であるといい, 連続より強い. 連続であるが, 絶対連続でない分布を特異分布という.
定理2.9 Lebesgue分解
任意の分布は, 純不連続分布, 絶対連続分布, 特異分布の凸結合で表される
凸結合とは?
$\mu_1, \mu_2, \ldots$ を分布として,
のとき, $\mu$ も分布となり, $\{ \mu_n \}$ の凸結合という.
証明
以下の順番で示す.
- $\mu$ が純不連続分布と連続分布の凸結合に,
- 連続分布が絶対連続分布と特異分布の凸結合に
i $\mu$ が純不連続分布と連続分布の凸結合
$\mu$ を任意の分布とする.
任意のBorel集合 $E$ に対して
を定義する. すると,
より, $\mu = \nu_d + \nu_c$. よって,
とおくと,
なので, $\mu$ は純不連続分布と連続分布の凸結合となっている ( 上に記した凸結合の定義と照らし合わせるなら, $\nu_d(\mathbb{R})$, $\nu_c(\mathbb{R})$ をそれぞれ $c_1$, $c_2$ とみなせばよい ) .
$\square$
ii 連続分布が絶対連続分布と特異分布の凸結合
$\mu$ を連続分布とする.
とおくと, 集合列 $E_n \in \cB$ があり,
とできる.
とおくと,
したがって,
$\because$ ( click )
略証であるが, 対偶を取って何を述べているか考えるとわかりやすい.
これはすなわち,
なので, これが意味することを考えよう. これは, $\mu(A)$ が正ならば, $\lambda(A)$ も正か, 上で定めた $S$ に $A$ が含まれるかのどちらかであるということを述べている.
なお, $\mu(A) \gt 0$ で $\lambda(A) = 0$ なのに $A \subset S$ とならないような $A$ はない. なぜならば, もしそのような $A$ があれば, $s$ は $\mu(A)$ を加えることで更に大きな値にできるから ( 即ち $s$ の定義に反する ) . $\square$
今,
とおくと,
なので, i と同様に,
とすることで, 凸結合とできる.
$\square$
なお, 当然であるが3つとも現れるとは限らない. 係数が $0$ となるときには, その項を取り去れば良い.
$\blacksquare$
感想・参考文献
参考文献
伊藤清 確率論 (岩波基礎数学選書)