確率測度に関する一致の定理
最終更新:2021/08/28
確率測度に関する一致の定理の証明. 伊藤『確率論』定理2.2.
非専門家が書いています. 十分に批判的に読んで頂くようお願いいたします. 間違い・疑問点などあれば, ぜひコンタクトフォームへ連絡いただけると幸いです.
確率測度に関する一致の定理
$P_1$, $P_2$ を $\Omega$ 上の確率測度とし, $\cA$ は $\cD(P_1) \cap \cD(P_2)$ に含まれる乗法族とする. このとき, $P_1$, $P_2$ が $\cA$ の上で一致すれば, $\sigma[\cA]$ の上で一致する. 即ち,
なお, ここで $\cD(P)$ は確率測度 $P$ の定義域で, $\sigma$-加法族である.
証明
以下の集合族 $\cB$ について考える.
このとき, $\cB$ はDynkin族である.
証明 ( click )
$\cB$ がDynkin族の条件を満たすことを一つづつ確かめればよい.
D.1
$\cD(P)$ は $\sigma$-加法族 なので, $\Omega \in \cD(P_1)$ かつ $\Omega \in \cD(P_2)$.
$P_1, P_2$ は確率測度なのでもちろん, $P_1(\Omega) = P_2(\Omega) = 1$ である.
よって, $\Omega \in \cB$.
D.2
$A, B \in \cB,\; A \cap B = \varnothing$ とする.
$A, B \in \cD(P_1)$ なので, $A + B = A \cup B \in \cD(P_1)$ ( $\sigma$-加法性による, $+$ は直和 ) .
同様に, $A + B \in \cD(P_2)$.
よって, $A + B \in \cD(P_1) \cap \cD(P_2)$.
また, $P$ が確率測度であり, $A$, $B$ が非交であることから,
よって, $A+B \in \cB$.
D.3
$A, B \in \cB,\; A \subset B$ とする. $\cD(P_1)$ は $\sigma$-加法族に注意.
$B \setminus A = B \cap A^c$ であり, 仮定より $B \in \cD(P_1)$, $A \in \cD(P_1)$ なので $A^c \in \cD(P_1)$.
よって $B \setminus A \in \cD(P_1)$. 同様に, $B \setminus A \in \cD(P_2)$.
また, $P$ が確率測度であり, $A \in B$ であることから,
よって, $A \setminus B \in \cB$.
$\square$
いま, $\cB \supset \cA$ である. ( $\because$ $A \in \cA$ とすると仮定より $P_1(A) = P_2(A)$ かつ $A \in \cD(P_1) \cap \cD(P_2)$. よって $A \in \cB$. )
よって, $\cB \supset \lambda[\cA]$ である ( $\lambda[\cA]$ は $\cA$ を含む最小のDynkin族であった ) .
$\cA$ は乗法族だったので, Dynkin族定理 より $\lambda[\cA] = \sigma[\cA]$, すなわち $\cB \supset \sigma[\cA]$. これで $P_1(A) = P_2(A),\; A \in \sigma[\cA]$ がわかった.
$\blacksquare$
感想・参考文献
感想
伊藤確率論で灰色にハッチされている部分の証明は「すぐわかる」で済まされている.
参考文献
伊藤清 確率論 (岩波基礎数学選書)