Lévyの反転定理
最終更新:2021/11/19
Lévyの反転定理 ( 伊藤『確率論』定理2.14 ) を紹介します.
特性函数がでてきて, やっと確率統計学っぽくなってきた.
非専門家が書いています. 十分に批判的に読んで頂くようお願いいたします.
間違い・疑問点などあれば, ぜひコンタクトフォームへ連絡いただけると幸いです.
特性函数の定義
$\mu$ を1次元の分布としたとき, 函数
\begin{align}
\large \varphi(z) = \int_{\mathbb{R}^1} e^{izx} \mu(dx)
\end{align}
を $\mu$ の特性関数 という.
これは, 結局分布 $\mu$ のFourier変換であるので, $\mathcal{F} \mu$ ともかく.
うえの式は十分に定義されているが, 追記すると, 離散の場合, つまり
\begin{align}
\large \mu =
\begin{pmatrix}
a_1 & a_2 & \cdots \\
p_1 & p_2 & \cdots \\
\end{pmatrix}
\end{align}
の場合 ( $a_1$ の $\mu$ 測度が $p_1$ となるということ. 確率論的に言うと, $a_1$ の 値をとる確率が $p_1$ . ) ,
\begin{align}
\large \varphi(z) = \sum_n p_n e^{i a_n z}
\end{align}
となる.
また, $\mu$ が密度 $f$ をもつとき ( たとえば絶対連続のときRadon-Nykodimより密度をもつ )
\begin{align}
\large \varphi(z) = \int_{\mathbb{R}^1} e^{izx} f(x) dx
\end{align}
となる.
Lévyの反転定理
$\varphi = \mathcal{F}\mu$ ならば,
\begin{align}
\large \mu(a, b) + \frac{1}{2}[\mu\{a\} + \mu\{b\}] = \lim_{c \rightarrow \infty} \frac{1}{2\pi}
\int_{-c}^{c}\frac{e^{-ibz} - e^{-iaz}}{-iz} \varphi(z)dz.
\end{align}
証明
上の積分部分を $F(c)$ とおく, つまり,
\begin{align}
F(c) = \int_{-c}^{c}\frac{e^{-ibz} - e^{-iaz}}{-iz} \varphi(z)dz.
\end{align}
まず, この積分から計算しよう.
\begin{align}
\frac{e^{-ibz} - e^{-iaz}}{-iz} = \int_a^b e^{-ixz} dx, \quad \varphi(z) = \int_{-\infty}^{\infty} e^{iyz} \mu(dy)
\end{align}
を $F(c)$ に代入して, Fubiniの定理によって ( 以降多用する ) , 以下のように積分順序をいれかえる.
\begin{align}
F(c) &= \int_{-c}^{c} \int_a^b e^{-ixz} dx \int_{-\infty}^{\infty} e^{iyz} \mu(dy) dz \\[5pt]
&= \int_{-\infty}^{\infty} \mu(dy) \int_a^b dx \color{#cf201f}{\int_{-c}^{c} e^{iz(y-x)} dz}.
\end{align}
赤字部分の積分は普通に計算できて,
\begin{align}
F(c) = \int_{-\infty}^{\infty} \mu(dy) \int_a^b \color{#cf201f}{2 \frac{\sin{c(x-y)}}{x-y}} dx
\end{align}
となる.
ここで, さらに $c(x-y) = u$ と変数変換すると,
\begin{align}
F(c) = 2 \int_{-\infty}^{\infty} \mu(dy) \int_{c(a-y)}^{c(b-y)} \frac{\sin(u)}{u} du
\end{align}
となり,
\begin{align}
G(x) = \int_0^x \frac{\sin(u)}{u} du
\end{align}
と定義した $G(x)$ を用いると,
\begin{align}
F(c) = 2 \int_{-\infty}^{\infty} [ G(c(b-y)) - G(c(a-y)) ] \mu(dy)
\end{align}
となる.
さて, 次に計算したいのは,
\begin{align}
\lim_{c \rightarrow \infty} F(c) = \lim_{c \rightarrow \infty} 2 \int_{-\infty}^{\infty} [ G(c(b-y)) - G(c(a-y)) ] \mu(dy)
\end{align}
である.
$G(x)$ は積分正弦関数を用いて表され, 一般に初等関数とはならないが, 極限においては,
\begin{align}
\lim_{x \rightarrow \infty} G(x) = \frac{\pi}{2},\quad \lim_{x \rightarrow -\infty} G(x) = -\frac{\pi}{2}
\end{align}
となることが知られているうえ, 連続関数であるので $-\infty \lt x \lt \infty$ で有界である.
よって, 積分と極限の順序を交換できて,
\begin{align}
\lim_{c \rightarrow \infty} F(c) = 2 \int_{-\infty}^{\infty} \lim_{c \rightarrow \infty} [ G(c(b-y)) - G(c(a-y)) ] \mu(dy)
\end{align}
となる. 積分の中身は,
\begin{align}
\lim_{c \rightarrow \infty} [ G(c(b-y)) - G(c(a-y)) ] =
\left\{
\begin{array}{ll}
\frac{\pi}{2} \quad (y = a, b), \\
\pi \quad (a \lt y \lt b), \\
0 \quad (\mathrm{otherwsie}), \\
\end{array}
\right.
\end{align}
であるので,
\begin{align}
\lim_{c \rightarrow \infty} F(c) = 2 \pi \mu(a, b) + \pi \mu\{a\} + \pi \mu\{b\}
\end{align}
となる.
$\blacksquare$
感想・参考文献
感想
これは, 特性関数から分布を復活させる定理であり, Fourier逆変換に対応するものだと思う.
とくに, $a$, $b$ が連続点ならば測度 $0$ なので, $\mu(a, b)$ が完全に定まる.
これを使って特性函数から分布を計算しよう!というより, ( $a$, $b$ が連続点ならば ) 分布と特性函数は一対一対応している, という事実が大切なのだと思う.
分布を特性関数で定義してもよいことになるから.
参考文献
伊藤清
確率論 (岩波基礎数学選書)
微分積分・平面曲線 (岩波 数学公式 1)