$ \newcommand\bm[1]{\boldsymbol{#1}} \newcommand\ve{\varepsilon} \newcommand\vecseq[3]{{#1}_{#2}, \ldots, {#1}_{#3}} \newcommand\cA{\mathcal{A}} \newcommand\cD{\mathcal{D}} \newcommand\cB{\mathcal{B}} \newcommand\cM{\mathcal{M}} $
 

Lévyの反転定理

Lévyの反転定理 ( 伊藤『確率論』定理2.14 ) を紹介します. 特性函数がでてきて, やっと確率統計学っぽくなってきた.


非専門家が書いています. 十分に批判的に読んで頂くようお願いいたします. 間違い・疑問点などあれば, ぜひコンタクトフォームへ連絡いただけると幸いです.

特性函数の定義

$\mu$ を1次元の分布としたとき, 函数

\begin{align} \large \varphi(z) = \int_{\mathbb{R}^1} e^{izx} \mu(dx) \end{align}

を $\mu$ の特性関数 という. これは, 結局分布 $\mu$ のFourier変換であるので, $\mathcal{F} \mu$ ともかく.

うえの式は十分に定義されているが, 追記すると, 離散の場合, つまり

\begin{align} \large \mu = \begin{pmatrix} a_1 & a_2 & \cdots \\ p_1 & p_2 & \cdots \\ \end{pmatrix} \end{align}

の場合 ( $a_1$ の $\mu$ 測度が $p_1$ となるということ. 確率論的に言うと, $a_1$ の 値をとる確率が $p_1$ . ) ,

\begin{align} \large \varphi(z) = \sum_n p_n e^{i a_n z} \end{align}

となる.

また, $\mu$ が密度 $f$ をもつとき ( たとえば絶対連続のときRadon-Nykodimより密度をもつ )

\begin{align} \large \varphi(z) = \int_{\mathbb{R}^1} e^{izx} f(x) dx \end{align}

となる.

Lévyの反転定理

$\varphi = \mathcal{F}\mu$ ならば,

\begin{align} \large \mu(a, b) + \frac{1}{2}[\mu\{a\} + \mu\{b\}] = \lim_{c \rightarrow \infty} \frac{1}{2\pi} \int_{-c}^{c}\frac{e^{-ibz} - e^{-iaz}}{-iz} \varphi(z)dz. \end{align}

証明

上の積分部分を $F(c)$ とおく, つまり,

\begin{align} F(c) = \int_{-c}^{c}\frac{e^{-ibz} - e^{-iaz}}{-iz} \varphi(z)dz. \end{align}

まず, この積分から計算しよう.

\begin{align} \frac{e^{-ibz} - e^{-iaz}}{-iz} = \int_a^b e^{-ixz} dx, \quad \varphi(z) = \int_{-\infty}^{\infty} e^{iyz} \mu(dy) \end{align}

を $F(c)$ に代入して, Fubiniの定理によって ( 以降多用する ) , 以下のように積分順序をいれかえる.

\begin{align} F(c) &= \int_{-c}^{c} \int_a^b e^{-ixz} dx \int_{-\infty}^{\infty} e^{iyz} \mu(dy) dz \\[5pt] &= \int_{-\infty}^{\infty} \mu(dy) \int_a^b dx \color{#cf201f}{\int_{-c}^{c} e^{iz(y-x)} dz}. \end{align}

赤字部分の積分は普通に計算できて,

\begin{align} F(c) = \int_{-\infty}^{\infty} \mu(dy) \int_a^b \color{#cf201f}{2 \frac{\sin{c(x-y)}}{x-y}} dx \end{align}

となる. ここで, さらに $c(x-y) = u$ と変数変換すると,

\begin{align} F(c) = 2 \int_{-\infty}^{\infty} \mu(dy) \int_{c(a-y)}^{c(b-y)} \frac{\sin(u)}{u} du \end{align}

となり,

\begin{align} G(x) = \int_0^x \frac{\sin(u)}{u} du \end{align}

と定義した $G(x)$ を用いると,

\begin{align} F(c) = 2 \int_{-\infty}^{\infty} [ G(c(b-y)) - G(c(a-y)) ] \mu(dy) \end{align}

となる.

さて, 次に計算したいのは,

\begin{align} \lim_{c \rightarrow \infty} F(c) = \lim_{c \rightarrow \infty} 2 \int_{-\infty}^{\infty} [ G(c(b-y)) - G(c(a-y)) ] \mu(dy) \end{align}

である.

$G(x)$ は積分正弦関数を用いて表され, 一般に初等関数とはならないが, 極限においては,

\begin{align} \lim_{x \rightarrow \infty} G(x) = \frac{\pi}{2},\quad \lim_{x \rightarrow -\infty} G(x) = -\frac{\pi}{2} \end{align}

となることが知られているうえ, 連続関数であるので $-\infty \lt x \lt \infty$ で有界である. よって, 積分と極限の順序を交換できて,

\begin{align} \lim_{c \rightarrow \infty} F(c) = 2 \int_{-\infty}^{\infty} \lim_{c \rightarrow \infty} [ G(c(b-y)) - G(c(a-y)) ] \mu(dy) \end{align}

となる. 積分の中身は,

\begin{align} \lim_{c \rightarrow \infty} [ G(c(b-y)) - G(c(a-y)) ] = \left\{ \begin{array}{ll} \frac{\pi}{2} \quad (y = a, b), \\ \pi \quad (a \lt y \lt b), \\ 0 \quad (\mathrm{otherwsie}), \\ \end{array} \right. \end{align}

であるので,

\begin{align} \lim_{c \rightarrow \infty} F(c) = 2 \pi \mu(a, b) + \pi \mu\{a\} + \pi \mu\{b\} \end{align}

となる.

$\blacksquare$

感想・参考文献

感想

これは, 特性関数から分布を復活させる定理であり, Fourier逆変換に対応するものだと思う. とくに, $a$, $b$ が連続点ならば測度 $0$ なので, $\mu(a, b)$ が完全に定まる.

これを使って特性函数から分布を計算しよう!というより, ( $a$, $b$ が連続点ならば ) 分布と特性函数は一対一対応している, という事実が大切なのだと思う. 分布を特性関数で定義してもよいことになるから.

参考文献

伊藤清 確率論 (岩波基礎数学選書)

微分積分・平面曲線 (岩波 数学公式 1)

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