分布列の収束
最終更新:2021/11/28
分布列の収束の定義と, 同値な命題 ( 伊藤『確率論』定理2.10 ).
非専門家が書いています. 十分に批判的に読んで頂くようお願いいたします. 間違い・疑問点などあれば, ぜひコンタクトフォームへ連絡いただけると幸いです.
定義
分布列 $\{\mu\}$ が $\mu$ に収束するとは, 任意の 有界連続実函数 $f$ に対して,
が成立すること. これを,
と記す.
分布の収束と同等な命題 ( 定理2.10 )
以下は同等. ただし, 分布 $\mu_n$, $\mu$ の分布函数を $F_n$, $F$ とする.
- $\mu_n \longrightarrow \mu$,
-
コンパクトな台をもつ任意の連続函数 $g$ に対し,
\begin{align} \large \int_{\mathbb{R}^1} g(x) \mu_n(dx) \longrightarrow \int_{\mathbb{R}^1} g(x) \mu(dx) \quad (n \rightarrow \infty) \end{align}
- $E^o$, $\overline{E}$ をそれぞれ $E$ の開核, 閉包とする. このとき, $\mu(E^o) = \mu(\overline{E})$ なる全ての $E$ に対し, $\mu_n(E) \longrightarrow \mu(E)$,
- $F$ の全ての連続点にたいして, $F_n(x) \longrightarrow F(x)$,
- $\mathbb{R}^1$ で稠密な可算集合 $C$ があって, ${}^\forall x \in C$ に対して, $F_n(x) \longrightarrow F(x)$.
証明
$\mathrm{(iii)} \Rightarrow \mathrm{(iv)} \Rightarrow \mathrm{(v)}$ はあきらかなので, $\mathrm{(v)} \Rightarrow \mathrm{(ii)} \Rightarrow \mathrm{(i)} \Rightarrow \mathrm{(iii)}$ を示す.
$\mathrm{(v)} \Rightarrow \mathrm{(ii)}$
$g$ をコンパクトな台をもつ連続函数とする. すると, $g$ は一様連続.
( $\because$ ) ( click )
例えば, 松坂『集合と位相』6章定理6. $(S, d)$ がコンパクトな距離空間なら, $(S, d)$ から任意の距離空間 $(S', d')$ への連続函数は一様連続.
したがって, ${}^\forall \ve \gt 0$ に対してコンパクトな台をもつ左連続階段函数 $g_\ve(x)$ があって,
注意 ( click )
一様連続であるので, $\ve$ という定数で抑えられる. 連続だが, 一様連続でない函数として, 例えば $1/x$ を考えれば $0$ に近いところで $\ve$ の様な定数が取れないことは解るだろう.
また, 仮定 ( v ) の $C$ は稠密 ( 即ち $\overline{C} = \mathbb{R}^1$ ) なので, 階段函数 $g_\ve$ の飛躍点 $a_i = a_i(\ve)$, $(i = 0, 1, \ldots, m, m = m(\ve))$ は全て $C$ に属すると仮定してよい ( もし, $a_i$ が $C$ の点でなくても, $C$ の集積点ではあるので, 上の式を満たすような $C$ の点を限りなく $a_i$ に近づけることで選べなおせる ) .
いま, 簡単のため以下を定める.
すると,
ここで, 第1項 ( また第2項も同様に )
が成り立つ. また, 第3項については,
で抑えられる. 一方, 仮定 ( v ) によって, 全ての $i = 0, 1, \ldots, m$ に対して, $\lim_{n \rightarrow \infty}F_n(a_i) = F(a_i)$ なので, 結局上の式は $n \rightarrow \infty$ で $0$ に収束する.
これらをまとめると,
$\ve$ は任意なので, $n \rightarrow \infty$ で $(g, \mu_n) - (g, \mu) \rightarrow 0$.
$\square$
$\mathrm{(ii)} \Rightarrow \mathrm{(i)}$
$f$ を任意の有界連続実函数とする. ${}^\forall m \gt 0$ に対し, $[-m, m]$ で $f$ と一致し, $[-m-1, m+1]$ の外では $0$ となる連続函数 $g$ を用意する. また, $f-g$ は有界なので, ある定数 $C$ が存在して, $|f(x) - g(x)| \leq C$ となる. この $C$ を用いて, 連続函数 $h(x)$ を
と定義する.
今, 証明のゴールは $|(f, \mu_n) - (f, \mu)|$ が $n \rightarrow \infty$ で $0$ となることである.
$f - g$ が $[-m, m]$ で $0$ なので ( 上図 ) ,
よって,
$C - h$ は $[-m, m]$ ( コンパクト ) の外では $0$ なので, 仮定 ( ii ) より, 以下がなりたつ.
よって,
また,
なお上の2式において, $(h, \mu) \leq C \mu([-m+1, m-1]^c)$ である理由は,
さらに, 函数 $g$ はコンパクトな台をもつので, 仮定 ( ii ) より,
ここまでで得られた不等式を式\eqref{bb}に代入すると,
右辺は, $m \rightarrow \infty$ で $0$ に収束するので,
$\square$
$\mathrm{(i)} \Rightarrow \mathrm{(iii)}$
$E$ を条件 ( iii ) を満たす集合とする ( $\mu(E^o) = \mu(\overline{E})$ ) . $\mathbb{R}^1$ の中では,
- 全ての開集合は増加閉集合の極限,
- 全ての閉集合は減少開集合の極限
であるから ( 例えば伊藤ルベーグ§4定理3.4 ) , あらゆる $\ve \gt 0$ に対して $F_\ve \subset E^o$ となる閉集合 $F_\ve$ と, $G_\ve \supset \overline{E}$ となる開集合 $G_\ve$ が存在する. すると,
仮定より, $\mu(E^o) = \mu(\overline{E})=\mu(E)$ なので,
この開集合 $G_\ve$ と閉集合 $\overline{E}$ とに対して連続函数 $f_\ve$ をとって,
と定義する. すると, 仮定 ( i ) より
不等号 $\color{#cf201f}{\leq}$ が成り立つ理由は, 以下の通り.
よって,
同様に, $E^o$ と $F_\ve$ に対して連続函数 $g_\ve$ をとって,
これで, 式\eqref{cc}と上式とから
がいえた.
$\square$
これで, 条件 ( i ) ~ ( v ) の同値性がいえた.
$\blacksquare$
感想・参考文献
感想
これで, 分布収束を示すときに使えそうな同値な条件が得られた. 結構難しかった.
参考文献
伊藤清 確率論 (岩波基礎数学選書)
松坂 集合・位相入門