伊藤『確率論』3章にでてくる幾つかの定義のまとめ
最終更新:2022/02/23
伊藤『確率論』3章には, いろいろ定義がでてきて頭が混乱してしまったので, いくつか重要そうな情報をまとめた. 特に, §3.2からが多め.
非専門家が書いています. 十分に批判的に読んで頂くようお願いいたします. 間違い・疑問点などあれば, ぜひコンタクトフォームへ連絡いただけると幸いです.
定義
$(\Omega, P)$ を可分完全確率空間とする.
$\text{a.s.}$
$\alpha(\omega)$ を $\omega \in \Omega$ に関する条件とする. 条件 $\alpha\{ \omega \}$ が成り立つ $\omega$ 全体, つまり外延 $\{ \omega \mid \alpha(\omega) \}$ を $\{ \alpha \}$ と表す.
もし, $\{ \alpha \}$ が $P$ 可測ならば, $\alpha$ を事象 (event) とよび, $P\{ \alpha \}$ を$\alpha$ が起こる確率という.
$P\{ \alpha \} = 1$ のとき, 「$\alpha$ は ほとんど確実に ( almost surely ) 起こる」, といい
と書く.
$\text{i.o.}$
いま, $\{ \alpha_n \} \in \cD(P)$ ならば,
に注意して,
を
とする. ある $\omega$ が, $\omega \in \bigcap_n \bigcup_{k \gt n} \{ \alpha_k \}$ であるとは,
ということで, つまり「どんな $n$ をとってきても $k \gt n$ で $\alpha_k$ がなりたつような $k$ を取ることができる」ということ. さらに換言すると, $\{ \alpha_n \; \text{i.o.} \}$ とは, 「$\alpha_1(\omega), \alpha_2(\omega), \ldots$ の中の無限個が成り立つ」ような $\omega$ の集合である.
$\text{f.e.}$
つぎに,
を
とする. うえと同様に考えると, ある $\omega$ が, $\omega \in \bigcup_n \bigcap_{k \gt n} \{ \alpha_k \}$ であるとは,
ということで, つまり「ある $n$ をとってこれて, 全ての $k \gt n$ で $\alpha_k$ がなりたつようにできる」ということ. さらに換言すると, $\{ \alpha_n \; \text{f.e.} \}$ とは, 「$\alpha_1(\omega), \alpha_2(\omega), \ldots$ の中の有限個を除いて全てが成り立つ」ような $\omega$ の集合である.
$S$ 値確率変数
$S$ を一般の集合とし, $X(\omega)$ を $\Omega$ の上の $S$ 値函数とする. もし, $S$ の上の可算分離族 $\cA$ が存在して,
となるとき, $X(\omega)$ は$P$ 可分であるという. このとき, $P$ 可分な $S$ 値函数 $X(\omega)$ を$S$ 値確率変数と呼ぶ.
「$S$ 値確率変数」という単語は, おそらく伊藤『確率論』内での特別な呼び方だと思われる. この場合, $P^X = PX^{-1}$ も可分完全確率測度となる.
母・娘
$X(\omega)$ を $S$ 値確率変数, $Y(\omega)$ を $T$ 値確率変数とするとき,
が成り立つならば, $Y(\omega)$ は $X(\omega)$ の娘, $X(\omega)$ は $Y(\omega)$ の母という.
$I : \Omega \to \Omega$ を恒等写像とすれば, $I$ は $(\Omega, P)$ 上の $\Omega$ 値確率変数である. 任意の確率変数 $X(\omega)$ に対して
であるので, $I(\omega)$ は全ての確率変数の共通の母ということになり, $I(\omega)$ と $\omega$ を同一視, すなわち $\omega$ 自身も確率変数と考えて, この意味で $\omega$ を確率母変数という.
期待値
注:この記事では値域の変更, 拡張された実直線なでについて割愛している.
のとき, $X(\omega)$ は $A$ の上で可積分という. とくに,
を, ( 可積分のとき ) $X(\omega)$ の期待値と呼ぶ. また,
とする.
感想・参考文献
参考文献
伊藤清 確率論 (岩波基礎数学選書)