$ \newcommand\bm[1]{\boldsymbol{#1}} \newcommand\ve{\varepsilon} \newcommand\vecseq[3]{{#1}_{#2}, \ldots, {#1}_{#3}} \newcommand\cA{\mathcal{A}} \newcommand\cD{\mathcal{D}} \newcommand\cB{\mathcal{B}} \newcommand\cM{\mathcal{M}} $
 

伊藤『確率論』3章にでてくる幾つかの定義のまとめ

伊藤『確率論』3章には, いろいろ定義がでてきて頭が混乱してしまったので, いくつか重要そうな情報をまとめた. 特に, §3.2からが多め.


非専門家が書いています. 十分に批判的に読んで頂くようお願いいたします. 間違い・疑問点などあれば, ぜひコンタクトフォームへ連絡いただけると幸いです.

定義

$(\Omega, P)$ を可分完全確率空間とする.

$\text{a.s.}$

$\alpha(\omega)$ を $\omega \in \Omega$ に関する条件とする. 条件 $\alpha\{ \omega \}$ が成り立つ $\omega$ 全体, つまり外延 $\{ \omega \mid \alpha(\omega) \}$ を $\{ \alpha \}$ と表す.

もし, $\{ \alpha \}$ が $P$ 可測ならば, $\alpha$ を事象 (event) とよび, $P\{ \alpha \}$ を$\alpha$ が起こる確率という.

$P\{ \alpha \} = 1$ のとき, 「$\alpha$ は ほとんど確実に ( almost surely ) 起こる」, といい

\begin{align} \alpha(\omega) \quad \text{a.s.} \end{align}

と書く.

$\text{i.o.}$

いま, $\{ \alpha_n \} \in \cD(P)$ ならば,

\begin{align} \left\{ \bigvee_n \alpha_n \right\} = \bigcup_n \{ \alpha_n \} \in \cD(P),\; \left\{ \bigwedge_n \alpha_n \right\} = \bigcap_n \{ \alpha_n \} \in \cD(P) \end{align}

に注意して,

\begin{align}\color{#cf201f}{ \alpha(\omega) \quad \text{i.o.}} \quad \text{(infinitely often)} \notag \end{align}

\begin{align} \{ \alpha_n \; \text{i.o.} \} = \left\{ \bigwedge_n \bigvee_{k \gt n} \alpha_k \right\} = \bigcap_n \bigcup_{k \gt n} \{ \alpha_k \} \in \cD(P) \end{align}

とする. ある $\omega$ が, $\omega \in \bigcap_n \bigcup_{k \gt n} \{ \alpha_k \}$ であるとは,

\begin{align} {}^\forall n,\; {}^\exists k \gt n, \quad \omega \in \{\alpha_k\} \end{align}

ということで, つまり「どんな $n$ をとってきても $k \gt n$ で $\alpha_k$ がなりたつような $k$ を取ることができる」ということ. さらに換言すると, $\{ \alpha_n \; \text{i.o.} \}$ とは, 「$\alpha_1(\omega), \alpha_2(\omega), \ldots$ の中の無限個が成り立つ」ような $\omega$ の集合である.

$\text{f.e.}$

つぎに,

\begin{align}\color{#cf201f}{ \alpha(\omega) \quad \text{f.e.}} \quad \text{(with a finite number of exceptions)} \notag \end{align}

\begin{align} \{ \alpha_n \; \text{i.o.} \} = \left\{ \bigvee_n \bigwedge_{k \gt n} \alpha_k \right\} = \bigcup_n \bigcap_{k \gt n} \{ \alpha_k \} \in \cD(P) \end{align}

とする. うえと同様に考えると, ある $\omega$ が, $\omega \in \bigcup_n \bigcap_{k \gt n} \{ \alpha_k \}$ であるとは,

\begin{align} {}^\exists n,\; {}^\forall k \gt n, \quad \omega \in \{\alpha_k\} \end{align}

ということで, つまり「ある $n$ をとってこれて, 全ての $k \gt n$ で $\alpha_k$ がなりたつようにできる」ということ. さらに換言すると, $\{ \alpha_n \; \text{f.e.} \}$ とは, 「$\alpha_1(\omega), \alpha_2(\omega), \ldots$ の中の有限個を除いて全てが成り立つ」ような $\omega$ の集合である.

$S$ 値確率変数

$S$ を一般の集合とし, $X(\omega)$ を $\Omega$ の上の $S$ 値函数とする. もし, $S$ の上の可算分離族 $\cA$ が存在して,

\begin{align} X^{-1} (\cA) \subset \cD(P) \end{align}

となるとき, $X(\omega)$ は$P$ 可分であるという. このとき, $P$ 可分な $S$ 値函数 $X(\omega)$ を$S$ 値確率変数と呼ぶ.

「$S$ 値確率変数」という単語は, おそらく伊藤『確率論』内での特別な呼び方だと思われる. この場合, $P^X = PX^{-1}$ も可分完全確率測度となる.

母・娘

$X(\omega)$ を $S$ 値確率変数, $Y(\omega)$ を $T$ 値確率変数とするとき,

\begin{align} X(\omega_1) = X(\omega_2) \Longrightarrow Y(\omega_1) = Y(\omega_2) \end{align}

が成り立つならば, $Y(\omega)$ は $X(\omega)$ の, $X(\omega)$ は $Y(\omega)$ のという.

$I : \Omega \to \Omega$ を恒等写像とすれば, $I$ は $(\Omega, P)$ 上の $\Omega$ 値確率変数である. 任意の確率変数 $X(\omega)$ に対して

\begin{align} I(\omega_1) = I(\omega_2) \Longrightarrow X(\omega_1) = X(\omega_2) \end{align}

であるので, $I(\omega)$ は全ての確率変数の共通の母ということになり, $I(\omega)$ と $\omega$ を同一視, すなわち $\omega$ 自身も確率変数と考えて, この意味で $\omega$ を確率母変数という.

期待値

注:この記事では値域の変更, 拡張された実直線なでについて割愛している.

\begin{align} \int_A |X(\omega)| P(d\omega) \lt \infty \end{align}

のとき, $X(\omega)$ は $A$ の上で可積分という. とくに,

\begin{align} \mathbb{E}[X] := \int_\Omega |X(\omega)| P(d\omega) \end{align}

を, ( 可積分のとき ) $X(\omega)$ の期待値と呼ぶ. また,

\begin{align} \mathbb{E}[X, A] := \int_A |X(\omega)| P(d\omega) = \mathbb{E}[X \cdot 1_A] \end{align}

とする.

感想・参考文献

参考文献

伊藤清 確率論 (岩波基礎数学選書)

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