$ \newcommand\bm[1]{\boldsymbol{#1}} \newcommand\ve{\varepsilon} \newcommand\vecseq[3]{{#1}_{#2}, \ldots, {#1}_{#3}} \newcommand\cA{\mathcal{A}} \newcommand\cD{\mathcal{D}} \newcommand\cB{\mathcal{B}} \newcommand\cM{\mathcal{M}} $
 

函数の台の定義

宮島『ソボレフ空間の基礎と応用』に函数の台の厳密な定義が載っていて, 面白かったのでメモしておく.

非専門家が書いています. 十分に批判的に読んで頂くようお願いいたします. 間違い・疑問点などあれば, ぜひコンタクトフォームへ連絡いただけると幸いです.

定義1

$\mathbb{R}^N$ の開集合 $\Omega$ に対して, $\Omega$ 上の連続関数 $\varphi$ の

\begin{align} \text{supp } \varphi := \overline{\{ x \in \mathbb{R}^N \mid \varphi(x) \neq 0 \}} \end{align}

で定義される. ここで $\overline{\{ \cdot \}}$ は閉包である.

これは, 僕にとって馴染みのある台の定義である. より厳密に, 連続とは限らない一般の可測函数に対しては, 台が以下のように定義される.

定義2

$\Omega \subset \mathbb{R}^N$ を開集合, $f:\Omega \to \mathbb{R}$ を可測函数とする. このとき,

\begin{align} \Lambda = \{ \omega \mid \text{open set }\omega \subset \Omega,\, f|_\omega = 0 \text{ a.e.} \} \end{align}

としたとき, $\Lambda$ の中で最大の元 ( 集合 ) $\omega_0$ がある. このとき, 台は

\begin{align} \text{supp } f := \overline{\Omega \setminus \omega_0} \end{align}

と定義される. $f$ が連続なら, 定義1と同じになる.

定義2の正当性

定義2において, 「$\Lambda$ に最大の元 $\omega_0$ が存在する」という箇所が自明でない. これを示す.

方針としては, $\omega_0$ として

\begin{align} \omega_0 = \bigcup_{\omega \in \Lambda} \omega \end{align}

とすれば, $\omega_0 \in \Lambda$ であることを示す. これは明らかに $\Lambda$ で最大の集合である.

  step1  
$\omega_0$ は, 開集合 $\omega$ の合併なので開集合である. よって, 残るは $f|_{\omega_0} = 0 \text{ a.e.}$ を示せばよい.

そのためには, あらゆるコンパクト集合 $K \subset \omega_0$ に対して $f|_K = 0 \text{ a.e.}$ を示せば良い. なぜなら, $\bigcup K \subset \omega_0$ だし, $f|_K = 0 \text{ a.e.}$ なので, $f|_{\bigcup K} = 0 \text{ a.e.}$ でもある. さらに, 可測函数の正則性より $\omega_0 - \bigcup K$ の ( Lebesgue ) 測度は $0$ なので, 結局 $f|_{\omega_0} = 0 \text{ a.e.}$ である.

なお, ここで可測集合の正則性とは, 任意のLebesgue可測集合 $A \subset \mathbb{R}^N$ に対して

\begin{align} \lambda(A) &= \inf\,\{ \lambda(O) \mid \text{open } O,\; A \subset O \} \\[5pt] &= \sup\,\{ \lambda(K) \mid \text{compact } K,\; K \subset A \} \notag \end{align}

が成り立つことである ( $\lambda$ はLebesgue測度 ) . 今回使ったのは二行目の事実である.

  step2  
あらゆるコンパクト集合 $K \subset \omega_0$ に対して $f|_K = 0 \text{ a.e.}$ を示す.

$K \subset \omega_0$ なので, $\forall x \in K$ に対して $\omega \in \Lambda$ で $x \in \omega$ なるものがある. $K$ はコンパクトなので, $K \subset \bigcup_{i=1}^{n} \omega_i$ ( $K$ の開被覆 ) となるような $(\omega_1, \ldots, \omega_n)$ を取ることができる.

このとき, 各 $\omega_i$ に対して $f|_{\omega_i} = 0 \text{ a.e.}$ なので $f|_K$ が $\text{ a.e. } 0$ であることもわかる.

$\blacksquare$

感想・参考文献

参考文献

宮島静雄 『ソボレフ空間の基礎と応用』

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