函数の台の定義
最終更新:2022/05/03
宮島『ソボレフ空間の基礎と応用』に函数の台の厳密な定義が載っていて, 面白かったのでメモしておく.
非専門家が書いています. 十分に批判的に読んで頂くようお願いいたします. 間違い・疑問点などあれば, ぜひコンタクトフォームへ連絡いただけると幸いです.
定義1
$\mathbb{R}^N$ の開集合 $\Omega$ に対して, $\Omega$ 上の連続関数 $\varphi$ の台は
で定義される. ここで $\overline{\{ \cdot \}}$ は閉包である.
これは, 僕にとって馴染みのある台の定義である. より厳密に, 連続とは限らない一般の可測函数に対しては, 台が以下のように定義される.
定義2
$\Omega \subset \mathbb{R}^N$ を開集合, $f:\Omega \to \mathbb{R}$ を可測函数とする. このとき,
としたとき, $\Lambda$ の中で最大の元 ( 集合 ) $\omega_0$ がある. このとき, 台は
と定義される. $f$ が連続なら, 定義1と同じになる.
定義2の正当性
定義2において, 「$\Lambda$ に最大の元 $\omega_0$ が存在する」という箇所が自明でない. これを示す.
方針としては, $\omega_0$ として
とすれば, $\omega_0 \in \Lambda$ であることを示す. これは明らかに $\Lambda$ で最大の集合である.
step1
$\omega_0$ は, 開集合 $\omega$ の合併なので開集合である.
よって, 残るは $f|_{\omega_0} = 0 \text{ a.e.}$ を示せばよい.
そのためには, あらゆるコンパクト集合 $K \subset \omega_0$ に対して $f|_K = 0 \text{ a.e.}$ を示せば良い. なぜなら, $\bigcup K \subset \omega_0$ だし, $f|_K = 0 \text{ a.e.}$ なので, $f|_{\bigcup K} = 0 \text{ a.e.}$ でもある. さらに, 可測函数の正則性より $\omega_0 - \bigcup K$ の ( Lebesgue ) 測度は $0$ なので, 結局 $f|_{\omega_0} = 0 \text{ a.e.}$ である.
なお, ここで可測集合の正則性とは, 任意のLebesgue可測集合 $A \subset \mathbb{R}^N$ に対して
が成り立つことである ( $\lambda$ はLebesgue測度 ) . 今回使ったのは二行目の事実である.
step2
あらゆるコンパクト集合 $K \subset \omega_0$ に対して $f|_K = 0 \text{ a.e.}$ を示す.
$K \subset \omega_0$ なので, $\forall x \in K$ に対して $\omega \in \Lambda$ で $x \in \omega$ なるものがある. $K$ はコンパクトなので, $K \subset \bigcup_{i=1}^{n} \omega_i$ ( $K$ の開被覆 ) となるような $(\omega_1, \ldots, \omega_n)$ を取ることができる.
このとき, 各 $\omega_i$ に対して $f|_{\omega_i} = 0 \text{ a.e.}$ なので $f|_K$ が $\text{ a.e. } 0$ であることもわかる.
$\blacksquare$
感想・参考文献
参考文献
宮島静雄 『ソボレフ空間の基礎と応用』