Cantor集合・Cantor函数

Cantor集合・Cantor函数の性質. 測度論など勉強していると何かとでてくるCantor集合・Cantor函数について, 少しまとめておく.


非専門家が書いています. 十分に批判的に読んで頂くようお願いいたします. 間違い・疑問点などあれば, ぜひコンタクトフォームへ連絡いただけると幸いです.

Cantor集合

定義 ( 作り方 )

区間 $I = [0, 1]$ とする. ここから, 以下のルールにそって開区間をどんどん抜いていく. そして, 残った閉区間がカントール集合である.

以下のstepを無限回繰り返すとカントール集合 $C$ が得られる.

  • step1: まず, 中央の開区間 $(\frac{1}{3}, \frac{2}{3})$ を取り除く.
  • step2: 残った2つの閉区間から $(\frac{1}{3^2}, \frac{2}{3^2})$, $(\frac{1}{3} + \frac{1}{3^2}, \frac{2}{3} + \frac{2}{3^2})$ を取り除く.
  • step2: 残った4つの閉区間から同様に, 三等分したときの真ん中の開区間を抜く.
  • これを無限回繰り返す.

図で見ると一目瞭然だと思う. 以下のように赤い区間を取り除いていって, 残った青い部分がカントール集合.

name

以下のように定義しても同じ集合が得られる.

\begin{align}\large{ C = \left\{ \left. x = \sum_{n=1}^{\infty} \frac{x_n}{3^n} \in \mathbb{R} \;\right| x_n \in \{0, 2\},\; n \in \mathbb{N} \right\}. }\end{align}

性質1:カントール集合は測度0, つまり零集合

証明

上に示したstep1, 2, ... で取り除かれた可算無限の開区間の合併 ( union ) はまた, 開であり, それを $G$ とする. また, $n$ 回目に取り除かれた開区間の測度 ( Lebesgue測度, 長さ ) は $2^{n-1} \frac{1}{3^n}$ なので, $G$ の測度 $m(G)$ は,

\begin{align}\large{ m(G) = \sum_{n = 1}^{\infty} \frac{n^{n-1}}{3^n} = 1 }\end{align}

となる. よって, 残った区間 ( カントール集合 ) の測度は,

\begin{align}\large{ m(C) = m(I) - m(G) = 1 - 1 = 0. }\end{align}

$\blacksquare$

性質2:カントール集合は可付番でない

可付番集合は零集合であることはよく知られている. しかし, 逆は成立しない. カントール集合がその反例である.

証明の準備 : カントール集合の3進記法

まず, $I$ の元は全て

\begin{align}\large{ x = \frac{\alpha_1}{3} + \frac{\alpha_2}{3^2} + \frac{\alpha_3}{3^3} + \cdots \quad \alpha_n \in \{ 0, 1, 2\} }\end{align}

とかける. これ簡単に,

\begin{align}\large{ x = 0.\alpha_1 \alpha_2 \alpha_3 \alpha_4 \cdots }\end{align}

とかくことにする. これも図で見ると簡単である. 以下のように, 区間 $I$ を3等分していく.

name

上の式で言っていることは, ある $x$ が上の式のように記されているとき,

  • $\alpha_1 = 0$ ならば $x$ は $a_1$ に属する,
  • $\alpha_1 = 1$ ならば $x$ は $b_1$ に属する,
  • $\alpha_1 = 2$ ならば $x$ は $c_1$ に属する.
さらに, $\alpha_1 = 0$ のとき,
  • $\alpha_2 = 0$ ならば $x$ は $a_2$ に属する,
  • $\alpha_2 = 1$ ならば $x$ は $b_2$ に属する,
  • $\alpha_2 = 2$ ならば $x$ は $c_2$ に属する.
というように, $x$ の居場所の解像度を上げていっていることになる.

これらを踏まえると, 取り除かれる集合は $(0.\alpha_1 \alpha_2 \cdots \alpha_{n-1} 1, 0.\alpha_1 \alpha_2 \cdots \alpha_{n-1} 2)$ と表されて, かつ $\alpha_1, \alpha_2, \ldots, \alpha_{n-1}$ は 0か2となる開区間の集合である. よって, もし $x \in $ 取り除かれる区間ならば, あるこのように表される区間があって, $0.\alpha_1 \alpha_2 \cdots \alpha_{n-1} 1 \lt x \lt 0.\alpha_1 \alpha_2 \cdots \alpha_{n-1} 2$ なので, $x$ の $\alpha_n = 1$ である.

さて, 逆に $x$ があって, それを3進記法で表したとき, それが1を含むならば,

\begin{align} x = 0.\alpha_1 \alpha_2 \cdots \alpha_{n-1} 1 \cdots \notag \end{align}

とかくことができる. ここで, 1は一番最初にでてくる1である. もし,

\begin{align} \underline{x} = 0.\alpha_1 \alpha_2 \cdots \alpha_{n-1} 1 000 \cdots \notag \end{align}

ならば, これは取り除かれる区間の左端なので, $x \in C$ である. なぜなら, 取り除かれる区間は開集合, つまりカントール集合は閉集合なので.

\begin{align} \overline{x} = 0.\alpha_1 \alpha_2 \cdots \alpha_{n-1} 1 222 \cdots \notag \end{align}

の場合も, これは取り除かれる区間の右端なので, $x \in C$ である. ここで, $\underline{x}$, $\overline{x}$ は以下のうにも書けることを考慮しよう. ( これは, 1.0が0.9999...とも書けるというのと同じはなしである. )

\begin{align} \underline{x} = 0.\alpha_1 \alpha_2 \cdots \alpha_{n-1} 0 222 \cdots \notag \\[5pt] \overline{x} = 0.\alpha_1 \alpha_2 \cdots \alpha_{n-1} 2 000 \cdots \notag \end{align}

今 $\alpha_1 \ldots \alpha_{n-1} \in \{0, 2\}$ であったことを思い出すと, カントール集合の元は3進記法を使うとき, 0, 2だけで表記できると分かる.

可付番でないことの証明

対角線論法を使う. まず, $C$ を可付番としよう, すなわち

\begin{align} C &= \{x_1, x_2, \ldots, x_n, \ldots \}, \\[5pt] x_n &= \alpha_{n1} \alpha_{n2} \cdots \alpha_{np} \cdots \quad (\alpha_{np} \in \{0, 2\}) \notag \end{align}

である.

今, $y = 0.\beta_1 \beta_2 \cdots$ とする. ただし, $\beta_n$ は, $\alpha_{nn}$ が0のとき2, 2のとき0とする. すると, $\beta_1, \beta_2, \ldots \in \{0, 2\}$ だから $y \in C$. しかし, $\beta_n$ の決め方から, $y \notin C$ でもあり, これは矛盾である.

$\blacksquare$

Cantor函数

定義 ( 作り方 )

厳密な定義は, 多くの教科書に載っているので直感的に書く. 次の手順で, カントール函数を$I = [0, 1]$ 上に定義していく. カントール集合 $C$ を作るときの過程を思い出そう. $C$ を作るときに

  • 1回目に取り除かれる区間上に $\frac{1}{2^1}$ を,
  • 2回目に取り除かれる2つの区間上にそれぞれ $\frac{1}{2^2}$, $\frac{1}{2^1} + \frac{1}{2^2}$, を,
  • 3回目に取り除かれる4つの区間上にそれぞれ $\frac{1}{2^3}$, $\frac{1}{2^2} + \frac{1}{2^3}$, $\frac{1}{2^1}+\frac{1}{2^3}$, $\frac{1}{2^1} + \frac{1}{2^2} + \frac{1}{2^3}$ を,
と繰り返していくわけだけど, 図を見るほうが遥かにわかりやすい.

name

このstepを無限に繰り返すと, 区間 $I$ で稠密な集合 $G$ 上で定義された単調増加函数 $\varphi(x)$ ができる. これを区間 $I$ に拡張するためには, 残りの部分 $I - G$, 則ちカントール集合 $C$ で $\varphi(x)$ を

\begin{align}\large{ \varphi(x) = \sup \{ \varphi(t) \mid t \lt x,\; t \in G \} \\[5pt] \varphi(0) = 0,\quad \varphi(1) = 1 }\end{align}

と定義すれば良い. これを, カントール函数という. この函数は驚くことに, 連続であるばかりでなく, ほとんど至るところ微分可能である.

性質1 : カントール函数は連続

証明

もし, 連続でないとすると, ある $x_0 \in I$ で不連続すなわち,

\begin{align}\large{ \varphi(x_0 - 0) \lt \varphi(x_0), \quad \mathrm{or} \quad \varphi(x_0) \lt \varphi(x_0+0) }\end{align}

である. $\varphi(x_0 - 0) \lt \varphi(x_0)$ は, $\varphi(x_0-0) \lt y \lt \varphi(x_0)$ なる $y$ を $\varphi$ がとらないことを示すが, 明らかに $n$ を充分に大きくすれば ${}^\forall \varepsilon,\; \varphi(x_0 - \varepsilon) \lt y \lt \varphi(x_0)$ なる $y$ がある. 同じことは, $\varphi(x_0) \lt \varphi(x_0+0)$ にも言えるので不連続という仮定が間違っていたことになる.

$\blacksquare$

性質 : カントール函数はほとんど至るところ微分可能

証明

$\varphi$ は$G$ の上では定数であり, $G^c$ の測度は0であった. すなわち, $\varphi$ は微分可能 $a.e.$である.

$\blacksquare$

感想・参考文献


感想

不思議な函数やな.

参考文献

伊藤 清三 ルベーグ積分入門(新装版) (数学選書)

吉田 洋一 ルベグ積分入門 (ちくま学芸文庫)

服部 哲弥 難問克服 ルベーグ積分

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