Borel-Lebesgueの被覆定理

数直線 $\mathbb{R}$ 上でのBorel-Lebesgueの被覆定理. 別名, Heine-Borelの被覆定理.

2024/01/17: にこさんからの指摘により, 証明の誤りを修正. ありがとうございます.

黒字は, そこそこに参考文献の裏付けがある 青字は, 私によって埋められた行間など ( その分正確性に欠けうる ) . 非専門家が書いています. 十分に批判的に読んで頂くようお願いいたします. 間違い・疑問点などあれば, ぜひコンタクトフォームへ連絡いただけると幸いです.

定理

$F$ は有界閉集合, $\left\{ G_{\lambda} \mid \lambda \in \Lambda \right\}$ は $F$ の開被覆, 即ち, $$ F \subseteq \bigcup_{\lambda \in \Lambda} G_{\lambda}$$ であるとき, $\left\{ G_{\lambda} \mid \lambda \in \Lambda \right\}$ の中から有限個の $G_{\lambda}$ を択んで $F$ の有限被覆を作ることができる ( 有限被覆可能, と以降呼ぶ ) .

証明

背理法で示す. つまり, 仮に $F$ は有限被覆可能でないとする.

$a = \inf F$, $b = \sup F$ と置いて $c$ を $[a, b]$ の中点とする. 即ち, $[a, b] = [a, c] \cup [c, b]$ である. このとき, 閉集合 $F \cap [a, c]$, $F \cap [c, b]$ の何れか一方は有限被覆可能でない ( $\because$ もし両方有限被覆可能であれば, $F = F \cap [a, b] = (F \cap [a, c]) \cup (F \cap [c, b])$ であるので, そもそも $F$ が有限被覆可能であることとなり矛盾 ). 今, $F \cap [a, c]$, $F \cap [c, b]$ のうち, 有限被覆可能でない方を $F \cap [a_1, b_1]$ とすると, 当然 $$ a \leq a_1 \lt b_1 \leq b,\quad b_1 - a_1 = (b-a)2^{-1}. $$

今度は, $[a_1, b_1]$ をその中点によって2等分し, 同様に有限被覆可能でない閉集合 $F \cap [a_2, b_2]$ を選ぶ. すると, $$ a \leq a_1 \leq a_2 \lt b_2 \leq b_1 \leq b,\quad b_2 - a_2 = (b-a)2^{-2}.$$ $[a_2, b_2]$ に対して同様のことを行い, どこまでも続けていくと, 有限被覆可能でない閉集合の列 $$F \cap [a_n, b_n], \quad (n = 1, 2, \ldots)$$ がえられる. ここで, $F \cap [a_n, b_n] \neq \emptyset$ である ( $\because$ もし, $F \cap [a_n, b_n] = \emptyset$ だと, どんなどんな $G_{\lambda}$ をとっても $F \cap [a_n, b_n] \subseteq G_{\lambda}$ なので, 有限被覆となり $F \cap [a_n, b_n]$ のとり方に反する ).

今, 以下が成り立っている.

\begin{align} a \leq a_n \leq a_{n+1} \lt b_{n+1} \leq b_n \leq b, \\[5pt] b_n - a_n = (b-a)2^{-n}. \label{a} \end{align}

\eqref{a}により, $p \leq q$ ならば $a_p \leq a_q \lt b_q $ なので, $a_p \lt b_q$. また, $p \gt q$ だとしても, $a_p \lt b_q \leq b_q$ なので, $a_p \lt b_q$ である. 即ち $p$, $q$ がどんな自然数でも,

\begin{align} a_p \lt b_q. \label{b} \end{align}

よって, $\alpha = \sup \{ a_n \mid n \in \mathbb{N} \}$ とおくと, \eqref{b}により, どの $b_n$ も $\sup \{ a_n \mid n \in \mathbb{N} \}$ の上界だから, $$ a \leq a_n \leq \alpha \leq b_n \leq b \quad (n = 1, 2, \ldots).$$

今, $\alpha$ の任意の近傍 $U_0$ をとったとき, $U(\alpha; \rho) \subseteq U_0$ であるとすると, $b_n - a_n = (b-a)2^{-n} \lt \rho$ なる $n$ に対しては, $[a_n, b_n] \subseteq U(\alpha; \rho) \subseteq U_0$. ここで, $U(\alpha; \rho)$は, この場合 $(\alpha - \rho, \alpha + \rho)$. これが, $\forall \rho \gt 0$ に対して成り立つのである. 一方, 先程確認したように, $F \cap [a_n, b_n] \neq \emptyset$ であるので, $F \cap U \neq \emptyset$. 即ち $\alpha$ は閉集合 $F$ の触点である. 従って, $\alpha \in \overline{F} = F$ である. $\overline{F}$ は $F$ の閉包 ( 触点の集合 ), $F$ が閉集合なので等号が成立. $\forall \rho \gt 0 \;\; F \cap U(\alpha; \rho) \neq \emptyset$ というのは, $\alpha$ が $F$ の触点であることの定義そのものである.

このように, $\alpha \in F$ である以上, 仮設 ( $F$ は有界閉集合, $\left\{ G_{\lambda} \mid \lambda \in \Lambda \right\}$ は $F$ の開被覆, ということ ) により $\alpha \in G_{\lambda}$ なる $G_{\lambda}$ があるので, これを $G_{\lambda_0}$ とする. $U_0$ について考えたことと同様に, $n$ を十分大きく取れば, $[a_n, b_n] \subseteq G_{\lambda_0}$. $[a_n, b_n]$ をいくらでも小さくできる上, $\emptyset$ にはならないことが要. 従って, $F \cap [a_n, b_n] \subseteq G_{\lambda_0}$. 今, $F \cap [a_n, b_n]$ は, ただ一個の $G_{\lambda_0}$ で被覆されてしまった. つまり, 有限被覆可能である. しかしながら, これは $F \cap [a_n, b_n]$ の定義と矛盾している. つまり, 「$F$ は有限被覆可能でない」という仮定が間違っている.

$\blacksquare$

感想

いわゆる区間縮小法が用いられている.

最初少し, なぜ $F \cap [a_1, b_1]$ のようにいちいち $F \cap {}$ を付けないといけないのかと思った. これは, $F$ として ( 切れ目のない ) 閉区間を想像していたからで, $F$ は有界閉集合であり, とぎれとぎれの集合であるのが普通と考えると当然だと思う.

主な参考文献


ほとんど, 吉田洋一ルベグ積分 ( ルベグ積分入門 (ちくま学芸文庫) ) の証明と同じ.

伊藤ルベーグ積分 ( ルベーグ積分入門(新装版) (数学選書) ) には, $\mathbb{R}^N$上での当定理の証明がある.

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